島田療育センターはちおうじ

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学術論文紹介

学術論文紹介

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島田療育センターはちおうじ(島はち)は、さまざまな研究を行い、発信しています。
発信することにより、島はちだけでなく、日本あるいは、世界の人々に有益な情報となるためです。
ここでは、島田療育センターはちおうじのスタッフが、著者として、発信した論文の概要を紹介します。

2024年

No
48
タイトル
低亜鉛血症の改善とともに不登校が改善した1例
A case who didn’t attend school improved by treatment of hypozincemia
掲載論文年:巻(号);Page
小児の精神と神経 2024: 64(3); 251-256
著者
小沢 浩, 井之上 寿美, 塩田 睦記, 白井 育子, 福田 あゆみ, 小沢 愉理
所属
島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
亜鉛は、300種類以上の酵素活性の中心であり、多彩な生理機能を持ち、精神行動の影響も関係しています。我々は、低亜鉛血症をきたした不登校の男児に酢酸亜鉛水和物を投与し、低亜鉛血症の改善とともに不登校が改善した男児を経験したので報告します。症例は13歳男児。診断は、自閉スペクトラム症、注意欠如多動症。中学1年から不登校。不登校特例校に転校するが、不登校は改善しませんでした。血中亜鉛濃度59μg/dLと低値だったため、酢酸亜鉛水和物50mg内服開始しました。内服時、バールソン児童用抑うつ尺度(DSRS-C)18点(cut off値16点)、スペンス児童用不安尺度(SCAS)合計点82点(cut off値26点)であり、うつ状態、不安障害を認めました。3か月後、学校には3日通えるようになりました。5か月後、学校に毎日通うようになりましたが、DSRS-C20点、SCAS90点でした。14か月後、DSRS-C8点、SCAS33点に低下しました。本児も酢酸亜鉛水和物を飲むといい感じがすると感想を述べました。亜鉛投与については、解明されていないことが多いので、今後検討をする必要があります。

2023年

No
47
タイトル
医学部学生の発達・療育に関する理解度調査
掲載論文年:巻(号);Page
小児の精神と神経 2023: 63(2); 145-153
著者
杉浦 信子1, 藤枝 幹也2, 松尾 宗明3, 北 洋輔4,5, 小沢 浩1
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  2. 高知大学 小児科
  3. 佐賀大学 小児科
  4. 慶応大学 文学部心理学専攻
  5. ヘルシンキ大学 医学部 脳認知研究ユニット
論文の要旨
障害児者を社会が正しく理解することがノーマライゼーション推進のためには大切ですが、障害に関わる知識は医療従事者を志す学生の間でも不十分です。本調査では医学部生を対象に発達や障害に関する知識の実態調査を行い、医学部生1年生209名を対象にアンケート調査を行いました。発達や障害に関する用語について既知・未知を問い、用語の説明を求めました。説明の記述をもとに得点化し、既報ののコメディカル学生との比較および、得点に影響を要因を解析しました。医学部生の得点はコメディカル学生と比較して有意に低かったです。高得点に影響を及ぼす要因として、コメディカル専攻、女性、高い年代の3点が示されました。発達や障害の理解度は医学部生では低く、また誤った認識も多く認められました。将来障害や疾患のある患児・患者と直接かかわることになる医学部生の社会意識の低さが懸念され、こうした問題に対応した医学教育の工夫が望まれると考えられました。
No
46
タイトル
環境調整により生活改善した遺伝性舞踏病(PDE10A異常症)の一例
掲載論文年:巻(号);Page
脳と発達 2023: 55(5); 368-370
著者
小沢 浩1, 白井 育子1,2, 久保田 雅也3, 大原 智子2, 熊田 聡子2
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  2. 東京都立神経病院 神経小児科
  3. 島田療育センター 小児科
論文の要旨
環境調整により改善した遺伝性舞踏病の一例を報告しました。症例は、18歳女性です。主訴は「死にたい」という訴えと頭痛です。専門学校に入りましたが、問題行動により退学してしまいました。島田療育センターはちおうじ(島はち)では、外来でマジックを披露して、笑いを引きだし、重症心身障害者の生活介護の通所のボランティア、放課後等デイサービスのアルバイトを行い、少しずつ気持ちが前向きになってきました。身体障害者手帳5級、精神保健福祉手帳3級取得し、障害年金2級取得し、生活は安定してきました。また、就労移行支援の環境調整を行いました。環境調整には、経過のステージ分類、コミュニーティー図が有効でした。神経小児の専門病院と療育施設が連携して支援を行うことで、社会につなげることができました。
No
45
タイトル
注意欠如多動症において母子の生活環境採点法が状態の改善に有効であった1例
掲載論文年:巻(号);Page
小児の精神と神経 2023: 63(2); 139-144
著者
小沢 浩, 井之上 寿美, 白井 育子, 福田 あゆみ, 塩田 睦記, 小沢 愉理
所属
島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
事例は8歳男児で、診断はADHD。集団行動がとれない、ルールが守れないという主訴で来院しました。我々が考案した生活環境採点法で評価を行ったところ、本児の①学校自己採点70点、②家自己採点50点、③自分自己採点70点でした。母親の④学校自己採点予想80点、⑤家自己採点予想30点、⑥自分自己採点予想60点、⑦母子育て点数40点、⑧父子育て協力点数90点でした。マイナスの理由は、①友達が入れてくれない。遊びを勝手に決められる。②パパにけられる。③(親の)いう事をきかない。暴力ふるっちゃう。すぐあきらめちゃう。であり、子ども家庭支援センターに通告し、Guanfacine(インチュニブ)内服開始しました。両親が協力し、生活環境が改善しました。①学校自己採点95点、②家自己採点70点と改善しました。母子における生活環境採点法は、母子の環境に対する気持ちを探り、マイナス理由を知ることができ、その対応を支援者・当事者がともに考えるためのツールとして有効でした。
No
44
タイトル
WISC-Vの積木模様とパズルに差がある場合の解釈について
掲載論文年:巻(号);Page
明星大学発達支援研究センター紀要 MISSION 9 2024: 39-46
著者
佐藤 匠, 神田 聡, 舘花 佳奈子
所属
島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
論文の要旨
WISC-Vでは新しく視空間、流動性推理の指標が導入されました。流動性推理は二次下位検査が2つあるものの、視空間に関しては唯一二次下位検査がありません。そのため積木模様とパズルに得点差がある場合、どのように解釈を進めていくと良いか、積木模様とパズルの得点差があった児童のWISC-Vのプロフィールの比較を通して検討しました。分析を進めた結果、複数の解釈仮説が想定され、障害特性との関連からの検討が必要と考えられました。

2022年

No
43
タイトル
Oral support for patients with severe motor and intellectual disabilities
掲載論文年:巻(号);Page
Pediatrics International 2022: 64(1); e15028
著者
Tatsuya Nakamuraa, Yosuke Kitab,c, Junpei Fujimotoa, Koichi Ayuzawaa, Hiroshi Ozawad
所属
  1. Department of Rehabilitation, Shimada Ryoiku Medical Center Hachioji for Challenged Children, Japan
  2. Mori Arinori Center for Higher Education and Global Mobility, Hitotsubashi University, Japan
  3. Cognitive Brain Research Unit, Department of Psychology and Logopedics, Faculty of Medicine, University of Helsinki, Japan
  4. Department of Pediatrics, Shimada Ryoiku Medical Center Hachioji for Challenged Children, Japan
論文の要旨
現状では、重症心身障害児者(SMID)の嚥下障害に対して、食事中に徒手的に下顎を支えるオーラルサポートの手技について十分な効果検証がなされていません。そこで、SMID9名(年齢=5~41歳、平均年齢=15.0歳、男性4名、女性5名)と健常成人24名(年齢=26~67歳、平均年齢=44.3歳、男性16名、女性8名)を対象に実施した嚥下造影検査(VF)の結果を用いて、オーラルサポートの効果を検討しました。結果、SMIDは健常成人に比較して、嚥下中に下顎骨が早期に下方移動を開始しており、舌骨の前方移動距離が短くなっていました。そして、SMIDにみられた下顎の早期下制や舌骨の前方移動距離の不足は、オーラルサポートによって一部改善していました。
No
42
タイトル
神経発達症児における血清亜鉛値の検討
掲載論文年:巻(号);Page
脳と発達 2022: 54; 356-358
著者
井之上 寿美1, 河野 芳美1, 河野 千佳1, 白木 恭子1, 塩田 睦記1, 雨宮 馨1,3, 中村 由紀子2, 杉浦 信子1, 小沢 愉理1, 北 洋輔4,5, 小沢 浩1
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  2. 島田療育センター 小児科
  3. さいわいこどもクリニック小児科
  4. 一橋大学 森有礼高等教育国際流動化機構
  5. ヘルシンキ大学 医学部脳認知研究ユニット
論文の要旨
神経発達症児の血清亜鉛値について健常児の参照値と比較検討しました。血清亜鉛値を測定した学齢期の神経発達症児63名(男児49名、女子14名)を患者群とし、先行研究において年齢分布が一致する380名の健常児のデータを用いて解析を行いました。その結果、患者群のうち19名(30%)が亜鉛欠乏症、また39名(62%)が潜在性亜鉛欠乏症、亜鉛値正常は5名(8%)であり、血清亜鉛値は健常児の参照と比較して有意に低値でした(p<0.001)。患者群の診断内訳では、ADHD(36名、54%)、自閉スペクトラム症(22名、39%)の2疾患が大部分を占めましたが、血清亜鉛値は疾患群で有意な差はなく(p=0.32)、性差も認めませんでした(p=0.95)。神経発達症児は亜鉛欠乏傾向にあると考えられ、疾患や性別による血清亜鉛値の明らかな違いはありませんでした。
No
41
タイトル
場面緘黙における友人関係の緊張緩和へマジック作戦が有効だった1例
掲載論文年:巻(号);Page
小児内科 2022: 54(3); 525-529
著者
小沢 浩
所属
島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
場面緘黙は、学校など特定の場面で一貫して発話に困難を示しますが、家庭などではほぼ通常の会話ができる状態です。外来で短時間で行えるマジック作戦が有効だった場面緘黙児の1例を経験したので報告します。症例は、7歳男児です。小学1年になり、学校でしゃべらないという主訴で来院しました。家では学校の様子をしゃべっていました。知能検査を行ったところ、質問に一切答えなかったため、数値が算出できませんでした。学校からは、支援級を勧められましたが、両親と本児が通常級を希望し、当院を受診しました。絵画語彙発達検査(単語に対応した絵を指差しで表現する)は、8歳2カ月時に語彙年齢は9歳9カ月でした。外来で、マジック作戦を行いました。マジック作戦とは、外来でマジックを男児に教え、そのマジックを、男児がお母さんに披露するというものです。学校では、担任の先生の協力もあり、放課後マジックを教室で発表し、友達に教えるようになり、友達と話せるようになりました。マジック作戦は、手続きが明確で具体的であるため、非言語的コミュニケーションにより、場面緘黙の改善に有効でした。
No
40
タイトル
聴覚過敏を持つ自閉スペクトラム症の児に対するイヤーマフの有効性と課題について
掲載論文年:巻(号);Page
脳と発達 2022: 54(1); 39-45
著者
河野 千佳, 雨宮 馨, 小沢 愉理, 大澤 麻記, 中村 由紀子, 小沢 浩
所属
島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
【目的】神経発達症における聴覚過敏に対するイヤーマフの有効性と課題を検討しました。
【方法】2015年12月から2016年10月の間、島田療育センターはちおうじ療育外来通院中でイヤーマフを使用している患者さん13人にアンケート調査を行いました。
【結果】対象となった全例が自閉スペクトラム症の診断を受け、12人に知的障害、1人にADHDの併存を認めました。イヤーマフは、約7割で毎日使用し、その過半数で1日8時間以上使用していました。イヤーマフを使用した感想は、69%が肯定的でしたが、76%で短所の指摘がありました。こだわりや不安が生じたといった精神面への影響は31%、汗疹、外耳道炎といった合併症は23%にみられ、その使用頻度は全て毎日でした。
【結論】イヤーマフは、一般的に安全で簡便に使用でき、聴覚過敏を持つ自閉スペクトラム症においてもQOLの改善が期待できる有効な手段ですが、イヤーマフに依存的になることで使用頻度が高くなる場合があり、合併症が生じる可能性があります。聴覚過敏を持つ自閉スぺクトラム症児にイヤーマフを勧める際には、適正使用に関する助言を行い、適切に使用できているか注意深く観察していく必要があります。
No
39
タイトル
乳幼児・児童のスマートフォン、タブレットの利用状況と生活実態調査
掲載論文年:巻(号);Page
日本小児科学会雑誌 2022: 126(11); 1489-1497
著者
小沢 愉理1, 小沢 浩1, 杉浦 信子2, 白川 由佳3, 北 洋輔3,4
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  2. 島田療育センターはちおうじ 児童精神科
  3. 一橋大学 森有礼高等教育国際流動化機構
  4. ヘルシンキ大学 医学部 脳認知研究ユニット
論文の要旨
島田療育センターはちおうじの一般小児外来または療育外来を受診している 乳幼児・児童を対象に、スマートフォン・タブレットの使用状況を調査、検討しました。2018 年 10 月~12 月に当センターを受診した保護者にアンケート調査を実施し、承諾を得た 165 名のうち不備があるものを除いた 107 名を対象としました。低年齢群(4 歳以下)、中年齢群(5 歳~8 歳)、高年齢群(9 歳以上)に分け、年齢とスマートフォン・タブレットの使用状況との関連、使用時間と睡眠 状況との関連、異なる外来間での使用状況の差異を検討しました。低年齢児ほどス マートフォン・タブレットを初めて視聴・操作した年齢が低く、高年齢児ほど使用時間が長いことがわかりました。両親の使用時間による影響は認めませんでした。使用時間「30 分以上」が「30 分未満」に比し、有意に就寝時間が遅かったです。各年齢群における危険使用時間は、「低年齢群」「中年齢群」で 30 分、「高年齢 群」で 60 分でした。小児一般外来と療育外来の児において、初めて視聴・操作した年齢に有意差は認めらませんでしたが、使用時間は療育外来の児が有意に長く、使用頻度が高かったです。スマートフォン・タブレットの家庭での保有率が高くなり、視聴の低年齢化が進んでいます。使用時間が長くなれば睡眠や依存に対する対策が必要です。今回のアンケート調査により、使用に関するルー ルの中の使用時間の目安になるのではないかと考えられました。

2021年

No
38
タイトル
Hyoid bone movement during swallowing and mechanism of pharyngeal residue in patients with profound intellectual and multiple disabilities
掲載論文年:巻(号);Page
International Journal of Pediatric Otorhinolaryngology 2021: 149; 110849
著者
Tatsuya Nakamuraa, Yosuke Kitab,c, Junpei Fujimotoa, Koichi Ayuzawaa, Hiroshi Ozawad
所属
  1. Department of Rehabilitation, Shimada Ryoiku Medical Center Hachioji for Challenged Children, Japan
  2. Mori Arinori Center for Higher Education and Global Mobility, Hitotsubashi University, Japan
  3. Cognitive Brain Research Unit, Department of Psychology and Logopedics, Faculty of Medicine, University of Helsinki, Japan
  4. Department of Pediatrics, Shimada Ryoiku Medical Center Hachioji for Challenged Children, Japan
論文の要旨
嚥下障害は、重症心身障害児者(PIMD)の死亡リスクと関連しています。本研究では、PIMDにおける嚥下時の舌骨運動の特徴を明らかにし、嚥下障害のメカニズムを検討することを目的としました。研究では、PIMD43名(平均年齢25.4歳、男性25名、女性18名)と健常成人24名(平均年齢44.3歳、男性16名、女性8名)を対象とし、過去に診療目的で実施した嚥下造影検査の結果を再解析しました。その結果、PIMD群では健常成人よりも舌骨の前方移動距離が小さく、下顎の下制距離が大きいなど、健常成人とは異なる嚥下動態が示されました。さらに、本研究で得られた結果を構造方程式モデリングにより解析したところ、嚥下時の異常姿勢や下顎の安定性の未熟さゆえに舌骨の前方移動距離が小さくなると梨状陥凹に咽頭残留が生じやすくなるという嚥下障害メカニズムが示されました。
No
37
タイトル
The quality of life of children with neurodevelopmental disorders and their parents during the Coronavirus disease 19 emergency in Japan
掲載論文年:巻(号);Page
Scientific reports 2021: 11; 3042
著者
Riyo Ueda1,2, Takashi Okada1, Yosuke Kita3,4, Yuri Ozawa2, Hisami Inoue2, Mutsuki Shioda2, Yoshimi Kono2, Chika Kono2, Yukiko Nakamura2, Kaoru Amemiya2, Ai Ito2, Nobuko Sugiura2, Yuichiro Matsuoka2, Chinami Kaiga2, Masaya Kubota2, Hiroshi Ozawa2
所属
  1. Department of Developmental Disorders, National Institute of Mental Health, National Center of Neurology and Psychiatry
  2. Department of Child Neurology, Shimada Ryoiku Center Hachioji, Tokyo, Japan
  3. Mori Arinori Center for Higher Education and Global Mobility, Hitotsubashi University, Tokyo, Japan
  4. Cognitive Brain Research Unit, Faculty of Medicine, University of Helsinki, Helsinki, Finland
論文の要旨
2020年5月に新型コロナウイルスにおいて、緊急事態宣言が発令されたときに、発達障害を持つお子様と保護者の生活の質(QOL)とその関連因子について、島田療育センターはちおうじと国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所知的・発達障害研究部(部長:岡田俊先生)とで共同研究を行い、上田理誉先生がまとめてくれました。
島田療育センターはちおうじに通院中の神経発達症の子どもと家族に、アンケート調査を行い、その研究成果がScientific reportsから出版されました。
論文では、下記の2点の新たな知見について述べています。
1.発達障害がある子どもとその親のQOL低下は、子どもの睡眠リズムが悪化していること、母親が柔軟に勤務形態を変更できないこと、と関連していた。
2.子どもの睡眠リズムが悪化したり、母親が通常勤務を継続することを余儀なくされたとしても、母親の育児ストレスや抑うつ・不安傾向が低い場合、子どもの不適応行動(不安・抑うつなどの内在化症状と攻撃行動などの外在化症状)が少ない場合には、QOLは保たれていた。
これらの知見は、新型コロナウイルス感染症緊急事態宣言下において発達障害の子どもと親が抱えるストレスがQOLに与える影響を示した初めての研究であり、子どもの睡眠リズムを整えたり、母親の勤務形態を柔軟に変更できるようことができることがQOL低下を防ぐ可能性があること、母親が抑うつや不安などのメンタルヘルス不調を抱えたり、子どもが困難な行動上の問題を抱える場合には、より細やかなサポートが必要であることを示しているといえます。
【参考URL】
No
36
タイトル
知的障害、発達障害におけるトランジションの取り組みについての検討
掲載論文年:巻(号);Page
小児の精神と神経 2021: 61(1); 43-51
著者
小沢 愉理, 小沢 浩
所属
島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
知的障害・発達障害を有する患者の移行は各自の多様性やニーズの違いがあり困難を極めます。島田療育センターはちおうじでは、福祉相談科と連携し移行に関する流れを考案し、移行期医療における現状と取り組み、移行先の医師に関するアンケートを実施したので報告します。2017年10月から2018年9月まで20歳以上で療育外来を継続している症例は療育外来全受診者の5.5%でした。自閉スぺクトラム症、脳性麻痺、ダウン症、てんかんが多かったです。
2018年1月から2019年4月までに精神科・心療内科への移行は44例でした。アンケートでは移行の困難さの理由について当事者の受診意欲、小児科と精神科の違い、治療関係の確立の難しさがあげられました。医療側に障害に関する知識や対応のスキルが求められ、小児科と精神科・心療内科医師間の連携の強化とともに、社会が当事者の抱える問題点についてより理解を深める必要があり、教育や福祉など多分野との連携を強化し、シームレスな支援が必要です。
No
35
タイトル
島田療育センターはちおうじにおける児童虐待防止委員会の活動について
掲載論文年:巻(号);Page
小児科 2021: 62(7); 746-750
著者
小沢 愉理, 小沢 浩
所属
島田療育センターはちおうじ
論文の要旨
島田療育センターはちおうじにおける院内虐待防止委員会(CAPS)の4年間の活動を報告しました。CAPS会議・通告件数は組織化したことにより増加していました。さらにCAPS報告件数、他機関からの紹介件数は最近2年間で増加していました。CAPSの活動により、組織的に判断、対応が可能となり、支援を多職種で多角的に検討できるようになっていました。担当医・スタッフの負担の軽減と通告や連携の迅速化につながりました。地域連携がスムーズになり、両方向的な関係の構築に寄与しました。療育機関には重症心身障害児者や神経発達症などの虐待のリスクが高い利用者が多いため、CAPSが活動することにより虐待の早期発見・防止が可能になると思われました。
No
34
タイトル
学校生活における「困った気持ち」をみつけるための学校自己採点法の活用
掲載論文年:巻(号);Page
脳と発達 2021: 53; 63-65
著者
小沢 浩1, 北 洋輔2,3
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  2. 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的・発達障害研究部
  3. ヘルシンキ大学 医学部 脳認知研究ユニット
論文の要旨
悩みを言語化しにくい子どもに、学校自己採点法の有用性を検討しました。86名を対象に、学校生活での「困った気持ち」について、自由回答(オープン質問)および学校生活に対する自己採点(学校自己採点法)によって回答を求めました。オープン質問に比べ、学校自己採点法によって「困った気持ち」を言語化できた子どもが有意に多く、子ども自身が学校生活を数値化する過程によって、悩みの言語化が促されたと考えられました。
No
33
タイトル
注意欠如・多動症の児童への投薬による学習態度の変化について
掲載論文年:巻(号);Page
小児の精神と神経 2021: 61(1); 43-51
著者
杉浦 信子1, 小沢 愉理1, 三橋 翔太2, 北 洋輔2,3, 小沢 浩1
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  2. 一橋大学 森有礼高等教育国際流動化機構
  3. ヘルシンキ大学 医学部 脳認知研究ユニット
論文の要旨
注意欠如多動症(ADHD)への薬物療法では主に行動面の症状改善によって効果判定がなされますが、学習面、特に学習態度に与える影響は明らかではありません。そこで通知表を利用して投薬による評定・評価の変化を検討しました。薬物療法を受けている39名の小学生のADHD患児を対象として、学校から配布される通知表を投薬前後で二度回収し、評価の変化を分析しました。国語・算数・体育の「関心・意欲・態度」の評価が投薬前に比べて投薬後では有意に高くなりました。理科や社会など他の科目では評価の変化が認められませんでした。投薬により学習意欲や態度が改善され、それらが教員から評価され評価が向上したと考えられました。
No
32
タイトル
WISC-IVの下位検査内のばらつき(ISS)に関する基準値の作成
掲載論文年:巻(号);Page
明星大学発達支援研究センター紀要 MISSION 6 2021: 77-88
著者
佐藤 匠, 神田 聡, 舘花 佳奈子,
所属
島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
論文の要旨
WISCの下位検査において中止条件に至るまでの正答と誤答を繰り返す、正答・誤答のバラつきはISS(Intra-subtest Scatter)と呼ばれています。現行のWISC-Vと比較して、WISC-IVは下位検査の中止条件に至るまでの誤答数が多い傾向にありました。WISCを解釈するにあたってエラー分析の重要性は言うまでもありませんが、どうしても検査者の経験に頼らざるを得ない一面があります。エラー分析を進めていく根拠の1つの指標になればと考えISS基準の作成に着手しました。本研究で作成した基準値は誤答数の中止条件の違いはあるものの、WISC-Vの解釈を進めていく上でも参考になると考えられます。
No
31
タイトル
WISC-IVの下位検査内のばらつき(ISS)が大きい場合の解釈について
掲載論文年:巻(号);Page
明星大学発達支援研究センター紀要 MISSION 6 2021: 89-98
著者
佐藤 匠, 神田 聡, 舘花 佳奈子,
所属
島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
論文の要旨
WISCの下位検査で中止条件に至るまで正答、誤答を多く繰り返す児童と、中止条件に至るまでの誤答数が少ない児童ではどのような違いが見られるか、WISC-IVの下位検査得点を中心に比較を行いました。この比較を通して、正答、誤答を多く繰り返す場合には児童の強みと苦手さが混在している可能性が考えられ、このことを明らかに進めていく上の解釈モデルを提案しました。

2020年

No
30
タイトル
A novel EFTUD2 mutation identified an adult male with mandibulofacial dystosis Guion-Almeida type
掲載論文年:巻(号);Page
Clinical Dysmorphology 2020
著者
Yoko Narumi-Kishimotoa, Hiroshi Ozawab, Kumiko Yanagic, Tomoko Kawaid, Koji Okamurae, Kenichiro Hatad, Tadashi Kanamec, Yoichi Matsuumaraf
所属
  1. Medical Genome Center, National Research Institute for Child Health and Development
  2. Department of Child Neurology, Shimada Ryouiku Center Hachioji
  3. Department of Genome Medicine
  4. Departments of Maternal-Fetal Biology
  5. Department of Systems BioMedicine
  6. National Research Institute for Child Health and Development, Tokyo, Japan
論文の要旨
下顎顔面異形成症 Guion-Almenida type(MFDGA, OMIM#610536は、U5-1116kD Protein, spliceosomal GTP aseでコードされているEFTD2による異常です。しかし、その長期予後はわかっていません。私たちは、新しいEFTUUD2の新しいframeshift mutationのMFDGAの23歳の男性例を報告します。
No
29
タイトル
カニューレフリー管理に関する通所施設での取り組み
掲載論文年:巻(号);Page
日本重症心身障害雑誌 2020: 45(3); 327-332
著者
伊東 藍1,2, 中村 由紀子1, 河野 千佳1, 雨宮 馨1,3, 小沢 愉理1, 小沢 浩1
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  2. 立川相互病院 小児科
  3. さいわいこどもクリニック 在宅診療部
論文の要旨
カニューレフリーは、気管内肉芽や気管腕頭動脈瘻などの合併症が防げる有用な方法のため、近年増加傾向にあるが、気管内吸引の実施者が医療者に限られるなどの課題があります。当院の重症心身障害者通所事業では、カニューレフリーの重症児(者)(以下、フリー児者)が4名いるため、送迎時に看護師が添乗できない場面が生じることがあり、緊急時に介護福祉士、保育士などの介護職が吸引することが避けられません。そこでカニューレフリーに関するワーキンググループ(以下、WG)を立ち上げました。WGの活動内容として、1.講習会の開催、2.フリー児者2名のカニューレフリーの状況評価と対応の検討、3.本人用チェックリストカードの作成、4.バスマニュアル用の急変対応フローチャートの作成、5.介護職に対する模擬モデルを用いた吸引手技と急変時対応の研修会の実施、6.介護職による送迎バスの添乗、を行いました。フリー児者が社会的制約により生活の質が低下することのないように、本WGのようなシステムが広がっていくことが必要です。
No
28
タイトル
療育センターにおけるSpotTM Vision Screenerの有用性について
掲載論文年:巻(号);Page
脳と発達 2020: 52; 384-389
著者
伊東 藍1, 中村 由紀子1, 松岡 雄一郎1, 河野 千佳1, 大澤 麻記1, 小沢 愉理1, 小沢 浩1, 菊池信介2
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  2. 菊池眼科医院
論文の要旨
【はじめに】近年、眼科疾患の早期発見や介入に対する眼科健診の有用性から、眼科スクリーニング検査器の普及が進んでいます。神経発達症・知的能力障害の患者においては、通常の眼科検査が困難な例が多い一方で、眼科検査異常のある例も多く、早期介入の重要性が知られています。島田療育センターはちおうじではSpotTM Vision Screenerを導入し、実施状況や有用性について調査・検討しました。
【対象と方法】当センターで同検査を開始した2017年10月から2018年9月までの検査例を対象に、検査結果や臨床的特徴、眼科的介入と経過等について診療録を用いて後方視的に検討しました。
【結果】検査依頼は134例で、初回での検査困難例が15例いたが再検査により129例が実施可能でした。診断は自閉スペクトラム症が30例、注意欠如/多動症が28例、知的能力障害が35例、発達性協調運動症3例、特異的学習障害6例、Down症候群 11例、その他 16例でした。自動測定基準の異常値を呈したのは48例(37.2%)81眼、うち当センターと連携眼科医とで設けた紹介基準をこえたのは18例(14.0%)24眼でした。新たに眼鏡を作製した9例中4例で視覚反応の改善や集中力の向上を認めました。
【結論】本検査は、通常の眼科検査が困難な患者においても、高確率に実施可能でした。また、眼鏡作製など治療的介入による視機能改善に伴い、視覚認知が向上し、発達促進や行動面の改善につながると考えられました。
No
27
タイトル
重症心身障害児者における食塊移送時の下顎,舌および舌骨の動態の特徴について
掲載論文年:巻(号);Page
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 2020: 24(1); 47-55
著者
藤本 淳平1, 中村 達也2, 岸 さおり1, 稲田 穣3, 上石 晶子4
所属
  1. 島田療育センター 言語聴覚療法科
  2. 島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
  3. 島田療育センター 歯科診療科
  4. 島田療育センター 小児科
論文の要旨
重症心身障害児者の食塊移送時の下顎、舌、舌骨の動態を健常成人と比較することにより、食塊移送不良を示す重症心身障害児者の摂食嚥下関連器官の動態特徴を明らかにすることを目的としました。健常成人14名 (健常群) と重症心身障害児者14名 (障害群) を対象に、ペースト食品3-5mlの嚥下を嚥下造影検査 (VF) を用いて撮影し、30フレーム/秒で動画記録しました。画像上に第二頸椎および第四頸椎を結んだ線分を基準線とする座標系を設定し、フレーム毎にオトガイ結節、切歯切縁と喉頭蓋谷最下点を結ぶ直線の中心から放射状に8等分した直線と舌表面の交点、舌骨体の上端と下端を結んだ直線の中間点、食塊頭部と食塊尾部の座標位置を追尾することで下顎、舌、および舌骨の運動方向ごとの運動開始のタイミングと持続時間を測定しました。そして下顎の咬合開始から舌の蠕動運動終了までの一連の運動を移送シークエンスとし、健常成人のシークエンス数を基準に、健常成人と同等であった者を移送良好群、健常成人よりも大きかった者を移送不良群に割付け、測定結果を群間比較しました。移送良好群は7名、移送不良群は7名でした。群間比較の結果、下顎が咬合位を持続している時間は移送不良群において健常群 (p=0.015) と移送良好群 (p=0.002) に比べて有意に短く、舌前方と硬口蓋が接触している時間は健常群 (p=0.023) と移送良好群 (p=0.001) に比べて有意に短かい結果となりました。そして移送不良群において、下顎の開口開始は舌骨挙上の直後に生じていました。これらの結果より、移送不良群の食塊移送では、下顎の咬合が持続しないことにより舌が口蓋から離れてしまうことで食塊移送に必要な舌圧が持続せず、複数回の移送運動を繰り返すといった特徴があると考えられました。
No
26
タイトル
重度の知的能力障害をともなった痙直性脳性麻痺児者における咽頭期嚥下の動態と咽頭残留の関係について
掲載論文年:巻(号);Page
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 2020: 24(2); 143-152
著者
藤本 淳平1, 中村 達也2, 岸 さおり1, 稲田 穣3, 上石 晶子4
所属
  1. 島田療育センター 言語聴覚療法科
  2. 島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
  3. 島田療育センター 歯科診療科
  4. 島田療育センター 小児科
論文の要旨
重症心身障害児者の咽頭期嚥下における下顎、舌骨、そして舌の動態および咽頭残留を健常成人と比較することにより、重症心身障害児者における咽頭期嚥下の動態と嚥下後咽頭残留の関係性を探ることを目的としました。健常成人24名 (健常群) と重症心身障害児者31名 (障害群)を対象に、ペースト食品3-5mlの嚥下を嚥下造影検査 (VF) を用いて撮影し、30フレーム/秒で動画記録しました。画像上に第二頸椎および第四頸椎を結んだ線分を基準線とする座標系を設定し、フレーム毎にオトガイ結節、舌骨体の上端と下端を結んだ直線の中間点、上顎中切歯舌側歯頸部最下点と喉頭蓋谷最下点を結ぶ直線の中心から放射状に8等分した直線と舌表面の交点の座標位置を追尾することで下顎と舌骨の運動方向ごとの移動距離および舌と口蓋および咽頭後壁の接触時間を測定しました。さらに、舌骨運動終了後の咽頭残留を喉頭蓋谷領域と梨状陥凹領域に分け、測定しました。そして、咽頭残留の領域ごとに健常成人の平均値の95%信頼区間上限値を基準値とし、基準値以上を残留あり群、基準値未満を健常範囲群と群分けし、測定結果を群間比較しました。さらに、領域ごとの嚥下後残留と各測定項目との相関係数を算出しました。その結果、障害群では全般的に下顎の下制距離が大きく、そして咽頭残留の部位によらず、残留あり群では健常群よりも舌骨の前方移動距離および舌前方-接触時間が短く、舌根-咽頭後壁接触時間が長いという結果となりました。喉頭蓋谷の咽頭残留はいずれの項目とも有意な偏相関を認めませんでしたが、梨状陥凹の咽頭残留は舌骨の前方移動距離との間に有意な偏相関を認めました。舌骨の前方移動距離の不足の要因としては、頭頸部の異常緊張や下顎の下制の影響によるオトガイ舌骨筋の収縮不全が考えられました。
No
25
タイトル
膀胱皮膚瘻造設により反復性尿路感染症の改善と生活の質の向上が得られた13トリソミーの1例
掲載論文年:巻(号);Page
日本重症心身障害学会誌 2020: 45(1); 169-173
著者
松岡 雄一郎1, 小沢 浩1, 小出 彩香2
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  2. 都立府中療育センター 小児科
論文の要旨
症例は25歳13トリソミーの重症心身障害者(以下、重症者)です。致命的な合併症のない長期生存例ですが、幼児期から反復性の尿路感染症に苦しめられ、18歳時から清潔間欠導尿(clean intermittent catheterization : CIC)による管理を開始しました。しかし、CICは本人、家族に負担が大きく、継続が困難になり、反復性尿路感染症はさらに憎悪し、上部尿路機能障害進行も懸念される状態となったため、管理不能と評価し、24歳時に膀胱皮膚瘻(cutaneous vesicostomy)造設となりました。以後、現在まで2年間、尿路感染症罹患は一度もなく、管理は医療行為を含まない簡便なものとなり、生活の質の著明な向上が得られています。重症者の長期のCIC継続は、本人および介助者たる家族の生活の質の低下が大きな課題となり、管理効果も確保できなくなることが懸念されます。膀胱皮膚瘻は、持続的尿失禁の状態となる単純な尿路変向術であるが、導尿やカテーテル留置が不要であり、高い尿路感染症予防効果、管理の簡便さに特に利点が大きく、重症者の反復性尿路感染症において、検討される価値の高い選択肢であります。
No
24
タイトル
膀胱皮膚瘻造設により下部尿路排尿機能障害管理とQOLが改善した4症例
掲載論文年:巻(号);Page
脳と発達 2020: 52; 421-423
著者
松岡雄一郎1, 中村由紀子1, 小沢浩1, 杉森光子2, 小出彩香3, 冨田直3
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  2. 島田療育センター 小児科
  3. 都立小児総合医療センター 神経内科
論文の要旨
神経疾患に合併する下部尿路排尿機能障害の管理に難渋し、膀胱皮膚瘻を造設された4例について検討しました。反復性尿路感染症は全例で消失し、2例で認めていた水腎症も改善しました。医療行為である間欠的導尿が不要になることで、患者・家族の生活の質の改善が見られました。膀胱皮膚瘻は、持続的尿失禁の状態とする尿路変向術ですが、保全的管理が困難な例においては多くの利点があり、検討される価値の高い手段だとわかりました。
No
23
タイトル
看護師・言語聴覚士を目指す学生の、発達・療育に関する理解度調査
掲載論文年:巻(号);Page
日本重症心身障害雑誌 2020: 45(3); 291-297
著者
杉浦信子1, 小沢浩2
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ児童精神科
  2. 島田療育センターはちおうじ神経小児科
論文の要旨
障害児者のノーマライゼーション推進のためには障害児者を社会が正しく理解することが大切です。そこで、発達・療育に関する知識が社会にどの程度正しく広まっているかを調査しました。入学直後の看護学生40名、言語聴覚科学生34名にアンケートを行いました。用語を知っているか否か、知っていれば数行で説明を記述するように依頼しました。アンケート配布数74、回収数74、回収率100%。18歳から43歳の男性14名、女性60名の回答を得ました。療育関係の用語は「知らない」との回答が多かった。特に超重症児、重症心身障害児、医療的ケアは認知度が低く、それぞれ93%、73%、69%が知らないと答えていました。発達障害関係の用語は誤答が多く、発達障害を発達遅滞(25名/74名)、学習障害を知的障害(15名/74名)とする回答が多かったです。発達・療育に関する理解は、汗疹が高いと思われる分野の学生においても不十分であり、今後正しい知識を伝えていく必要があると考えられました。

2019年

No
22
タイトル
MYCN de novo gain-of-function mutation in a patient with a novel megalencephaly syndrome
掲載論文年:巻(号);Page
J Med Genetics 2018: 0: 1-8
著者
Kohji Kato1,2, Fuyuki Miya3,4, Nanako Hamada5, Yutaka Negishi1, Yoko Narumi-Kishimoto6, Hiroshi Ozawa6, Hidenori Ito5, Ikumi Hori1, Ayako Hattori1, Nobuhiko Okamoto7, Mitsuuhiro Kato8, Tatsuhiko Tsunoda3,4, Yonehiro Kanemuura9,10, Kenjiro Kosaki11, Yoshiyuki Takahashi2, Koh-ichi Nagata5, Shinji Saitoh1
所属
  1. Department of Pediatrics and Neonatology, Nagoya City University Graduate School of Medical Sciences, Nagoya, Japan
  2. Department of Pediatrics, Nagoya University Graduate School of Medicine, Nagoya, Japan
  3. Department of Medical Science Mathematics, Medical Research Institute, Tokyo Medical and Dental University, Tokyo, Japan
  4. Laboratory for Medical Science Mathematics, Center for Integrative Medical Sciences, Tokyo, Japan
  5. Department of Molecular Neurobiology, Institute for Developmental Research, Aichi Human Service Center, Kasugai, Japan
  6. Department of Pediatrics, Shimada Ryoiku Center Hachiouji, Tokyo, Japan
  7. Department of Medical Genetics, Osaka Women's and Children's Hospital, Osaka, Japan
  8. Department of Pediatrics, Showa University School of Medicine, Tokyo, Japan
  9. Division of Biomedical Research and Innovation, Institute for Clinical Research, Osaka National Hospital, National Hospital Organization, Osaka, Japan
  10. Department of Neurosurgery, Osaka National Hospital, National Hospital Organization, Osaka, Japan
  11. Center for Medical Genetics, Keio University School of Medicine, Tokyo, Japan
論文の要旨
Abstract:
この研究では、巨脳症・脳室拡大・脳梁低形成・知的障害・多指症・神経芽細胞腫を合併する未診断の神経発達異常症の遺伝子診断を目的としました。
Method:
Trio-based, whole-exome sequencingが行われました。遺伝子異常の病理物理学的重要性を解明するために生化学的分析も行いました。
Results:
私たちは、heterozygous missense mutation (c.173C>T; p.Thr58Met) を発見しました。
Conclusion:
私たちは、c.173C>Tの変異とMYCN protein の蓄積を認め、CCND1とCCND2の表現延長を認めました。これは、大脳皮質の神経新生を促進し、巨脳症の原因となり、初めての報告となります。
No
21
タイトル
「ありがとう作戦ゲーム」により母親の子どもへの態度が変容し改善した発達障害の一例
掲載論文年:巻(号);Page
脳と発達 2019: 51; 314-317
著者
小沢 浩
所属
島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
注意欠如・多動症(以下,ADHD)の診断治療ガイドライン第4版では,治療・支援における環境調整,心理社会的治療の位置づけが明確化されました.また自閉スペクトラム症(以下、ASD)においては,保護者は子育てにストレスを抱えやすく,肯定的な介入を促す支援が有効です.我々は,外来で行える心理社会学的治療として,「行動処方」を提唱しています.今回その一つである,「ありがとう作戦ゲーム」がADHD,ASDの症例に有効であったので報告します.
症例は6歳男児.主訴は落ち着きない.母親は,子育てに悩み,叩いていたために子ども家庭支援センターが指導しました.本児をほめるために「ありがとう作戦ゲーム」を行いました.「ありがとう作戦ゲーム」とは,ほめることを具体的に提示する方法であり,「ありがとう」と言おうと思ったら+1点,言えたら+3点,3回言えたら+5点と「ありがとう」と言うことを点数化する手法です.今回,「ありがとう作戦ゲーム」を行うことにより,母親は本児を叩かなくなり,母親の子どもへの態度が変容し,母子関係および本児の行動も改善しました.「ありがとう作戦ゲーム」は,母親と子どもの関係を改善し,笑顔を増やす手法として有効でした.
No
20
タイトル
重症心身障害児者において下顎の安定性が嚥下動態に及ぼす影響
掲載論文年:巻(号);Page
言語聴覚研究 2019: 16(2); 95-103
著者
藤本 淳平1, 中村 達也2, 豊田 隆茂1, 岸 さおり1, 稲田 穣3, 上石 晶子4
所属
  1. 島田療育センター 言語聴覚療法科
  2. 島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
  3. 島田療育センター 歯科診療科
  4. 島田療育センター 小児科
論文の要旨
重症心身障害児者における下顎の安定性が咽頭期嚥下に与える影響を探ることを目的に、口腔期の舌運動 (前後・上下) の違いによる嚥下時の下顎運動および舌骨運動の差異を比較しました。対象は重症心身障害児者10名とし、口腔期の舌運動が前後動である5名 (男性4名女性1名:15.8±20.6歳) を前後動群、上下動である5名 (男性2名女性3名:27.2±16.2歳) を上下動群と割付けました。対象者のペースト食品3-5mlの嚥下を嚥下造影検査で撮影し、下顎と舌骨について運動方向 (垂直方向、水平方向) ごとの移動距離および移動時間を計測しました。結果、下顎運動では、下制および後退距離が上下動群に比べて前後動群で長い結果となりました (p=.009)。舌骨運動では、最大挙上位 (p=.007) および最大前進位停滞時間 (p=.011) が上下動群に比べて前後動群で短かい結果となりました。
これより、前後動群は嚥下時に下顎の固定が不十分なため舌骨の最大挙上位および最大前進位における停滞時間が短かったと考えられました。
No
19
タイトル
島田療育センターはちおうじ開設6年間の療育外来の検討
掲載論文年:巻(号);Page
小児科診療 2019: 82(4); 535-539
著者
小沢 愉理, 河野 千佳, 大澤 麻記, 中村 由紀子, 小沢 浩
所属
日本心身障害児協会 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
島田療育センターはちおうじ開設後6年間の受診者の実態について検討しました。電話相談は年間1,100~1,200件、面談は約700~800件、初診は750~800人で、初年度に比し再診は約2.5倍、療育診療ののべ人数は約1.8倍に直線的に増加していました。療育センターに対する支援ニーズは増加しており、多くの施設で慢性的な長期間の初診待機になっています。教育機関や行政などの地域と連携しながら、顔の見える切れ目のない縦横連携の支援を進めていきたいです。

2018年

No
18
タイトル
Angelman症候群児における摂食嚥下機能の発達経過-粗大運動発達、認知・言語発達との関連-
掲載論文年:巻(号);Page
言語聴覚研究 2018: 15(4); 332-341
著者
中村 達也1, 加藤 真希1, 雨宮 馨2, 鮎澤 浩一1, 小沢 浩2
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
  2. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
Angelman症候群(以下、AS)の児は、乳幼児期には哺乳障害や摂食嚥下障害を示し、学童期には未熟な咀嚼機能にとどまる場合が多いと報告されています。しかし、離乳期AS児の摂食嚥下機能の獲得に関する報告は少なく、経過には不明な点が多いのが現状です。今回、1歳から就学までの間、摂食指導を継続したAS児を経験しました。症例の摂食嚥下機能の獲得時期を、粗大運動および認知・言語機能の発達の観点から診療録を後方視的に検討したところ、運動発達において四つ這い獲得後に舌挺出のない嚥下と捕食、伝い歩き獲得後に押しつぶし、独歩獲得後に咀嚼を獲得しましたが、口唇閉鎖が伴わず食塊形成は不十分でした。本児は定型発達とは異なり、運動発達が進んでから摂食嚥下機能を獲得しましたが、獲得された粗大運動は、両膝伸展位の座位や、手指屈曲位で手掌が接地しない四つ這いなど、定型発達とは質的な差がありました。また、乳幼児期から口腔領域の感覚過敏が強く、就学前も感覚過敏は軽減したものの残存していました。
No
17
タイトル
重症心身障害児者におけるペースト食品嚥下開始時の食塊先端部の位置
掲載論文年:巻(号);Page
日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌 2018: 22(3); 185-192
著者
中村 達也1, 藤本 淳平1, 鹿島 典子1, 豊田 隆茂2, 鮎澤 浩一1, 小沢 浩3
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
  2. 島田療育センター リハビリテーション部言語聴覚療法科
  3. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
重症心身障害児者の舌骨は、嚥下造影検査(VF)で鮮明に投影されないことも多く、咽頭期嚥下の特徴が不明確な現状があります。そこで、本研究では、重症心身障害児者の咽頭期嚥下の特徴を明らかにするために、舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置を健常成人と比較しました。健常成人19名(健常群)と重症心身障害児者41名(障害群)について、ペースト食品3~5 mLの自由嚥下時のVFを撮影し、30フレーム /秒で動画記録しました。VF動画をフレームごとに解析し、舌骨挙上開始時と舌根部と咽頭後壁の接触時の特定、舌骨挙上開始時の特定が可能だった者の舌骨挙上開始時から舌根部と咽頭後壁の接触時までの時間間隔の測定、誤嚥の有無の評価をしました。さらに、舌骨挙上開始時および舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置を、喉頭蓋谷を基準に到達前・到達・通過後の3段階で評定しました。統計解析は、一元配置分散分析およびFisher’s exact testを用いて比較しました。その結果、舌骨挙上開始時から舌根部と咽頭後壁の接触時までの時間間隔の群間差は認めませんでした。各群の平均値は0.105~0.231秒であり、舌骨挙上開始時と舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置は92.8%の対象者で一致していました。 舌根部と咽頭後壁の接触時の食塊先端部の位置は、健常群では到達前:7名(36.8%)・到達:12名(58.3%)・通過後:0名、障害群では到達前:2名(4.9%)・到達:18名(43.9%)・通過後:21名(51.2%)であり、群間差を認めました。これらの結果より、障害群は健常群に比較して、嚥下開始前に食塊が深部に到達しやすいと考えられました。
No
16
タイトル
重症心身障害児者の嚥下時舌骨運動の特徴:健常成人との比較
掲載論文年:巻(号);Page
日本摂食嚥下リハビリテーション学会誌 2018: 22(3); 205-213
著者
中村 達也1, 北 洋輔2, 藤本 淳平1, 甲斐 智子1, 稲田 穣3, 鮎澤 浩一1, 小沢 浩4
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
  2. 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所知的障害研究部
  3. 島田療育センター 歯科診療科
  4. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
本研究では、重症心身障害児者の咽頭期嚥下の特徴を、嚥下時舌骨運動を健常成人と比較することで明らかにすることを目的としました。健常成人24名(健常群)と重症心身障害児者24名(障害群)について、嚥下造影検査(VF)を用いてペースト食品3~5 mLの嚥下を撮影し、30フレーム /秒で動画記録しました。第二および第四頸椎を基準線とした座標面を設定し、VF動画をフレームごとに解析することで、舌骨の挙上開始時から最大挙上時までの前方・上方・総移動距離、移動軌跡、下顎 ―舌骨間距離を測定しました。さらに、舌骨移動時間を各対象者について共通の時間単位に線形変換後、舌骨運動を挙上相と前進相の段階に分けました。そして、健常群の平均値95%信頼区間下限値を基準値とし、挙上相で基準値を下回った者を挙上相後退群、前進相で下回った者を前進相停滞群と群分けし、評価結果を一元配置分散分析で群間比較しました。その結果、挙上相後退群は12名、前進相停滞群は7名であり、舌骨の前方移動距離は、健常群が挙上相後退群(p<0.01)および前進相停滞群(p<0.01)に比較して有意に大きいという結果となりました。また、舌骨の上方移動距離は、挙上相後退群が健常群に比較して有意に大きく(p<0.01)、下顎 ―舌骨間距離は挙上相後退群が健常群(p<0.01)、前進相停滞群(p<0.05)に比較して有意に大きいという結果になりました。この要因として、挙上相後退群は腹側舌骨上筋群の筋の延長による筋出力低下、前進相停滞群は舌骨下筋群の伸張性低下または低緊張による筋出力低下が考えられました。
No
15
タイトル
喉頭気管分離術後のカニューレフリーの検討
掲載論文年:巻(号);Page
脳と発達 2018: 50(5); 362-363
著者
小沢 浩, 雨宮 馨, 小沢 愉理, 河野 千佳, 大澤 麻記, 中村 由紀子
所属
島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
喉頭気管分離術後のカニューレフリーの10例について検討しました。カニューレフリー前にみられた気管内肉芽(5例)気管内出血(6例)、喘鳴(8例)いずれも全例が消失し、吸引回数はカニューレフリー前から吸引をしていなかった1例を除く9例全例において吸引回数が減少し、超重症児スコアは吸引回数の減少により6名が低下していました。母親のカニューレフリーの感想は、9例でとてもよかったとの回答を得ました。自由記載では、反応が良くなった、様々な姿勢ができるなど、生活の質が向上したことが示されていました。窒息は2例ありましたが、2例とも自力排痰ができない例であり、1例はカニューレ使用に変更し、1例は窒息後カニューレフリーを継続し持続吸入を行っていました。生活面においても、お風呂が大変である、ヘルパーと外出できない、という意見がありました。介護職が吸引できないために生活は制限されることがわかりました。自力排痰ができない例においては、カニューレフリーは慎重にすべきであり、今後、カニューレフリーについて、適応・方法・生活など整備が必要であることがわかりました。
No
14
タイトル
医療と教育との連携によりQOLが改善した書字表出障害を伴う自閉症スペクトラム障害の一例
掲載論文年:巻(号);Page
小児の精神と神経 2018: 58(2); 131-139
著者
小沢 浩
所属
島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
医療と教育との連携により学校生活でのQOLが改善した書字表出障害を伴った自閉症スペクトラム障害の一例を報告しました。
症例は、12歳男児。幼児期に広汎性発達障害と診断されました。小学校に入って、読みには問題なかったが、ひらがな・カタカナ・漢字書字の著しい困難さを認めました。学校での資料、各種検査の結果などからDSM-5により、書字表出障害と診断しました。
志望校の私立中学校に学習障害の診断書を提出し、受験の際、試験時間の延長措置を受け、合格しました。入学後、クラスメイトに対して学習障害をテーマとする授業を行うとともに、テストの時間延長、解答用紙の拡大、別室受験等の合理的配慮を受けました。学校自己採点法では、小学校4年生のときが23点でしたが、中学校1年生12月には95点に上昇しました。
書字表出障害を適切に診断し、特性にあった学習方法を検討し、本人・家族・学校など周囲の理解を深めて環境調整、合理的配慮を協力して行うことが重要であることがわかりました。

2017年

No
13
タイトル
Down 症候群の舌突出嚥下と粗大運動・認知・言語発達の関連:予備的研究
掲載論文年:巻(号);Page
日本摂食嚥下リハビリテーション学会雑誌 2017: 21(3); 200-208
著者
中村 達也1, 鮎澤 浩一1, 小沢 浩2
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
  2. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
Down症(以下、DS)児の舌突出嚥下と粗大運動、認知・言語発達との関連の詳細は不明な点が多いのが現状です。そこで、本研究ではこれらの関連について明らかにすることを目的としました。1 歳から9 歳までのDS 児38 名を対象に離乳初期食および離乳中期食の摂取時の様子を動画記録し、舌突出嚥下の回数と定型発達児の離乳中期以降にみられる口腔内での食物処理時の舌の上下運動の有無を評価しました。粗大運動発達の評価には Gross Motor Function Measure (以下、GMFM)-66、認知・言語発達の評価には新版K 式発達検査2001 を用いました。得られた結果より、舌突出嚥下の回数との関連を検討しました。その結果、離乳初期食・中期食摂取時の舌突出嚥下の回数と月齢、 GMFM-66 合計点、新版K 式発達検査2001 の発達月齢に相関がみられました。舌突出嚥下低頻度群は、高頻度群に比してGMFM-66合計点が高く、特に四つ這いやベンチ上での座位が可能な児が多い結果となりました。さらに、舌突出嚥下低頻度群の多くは、処理時の舌の上下運動を獲得していました。一方で、舌突出嚥下低頻度群と高頻度群で、新版K 式発達検査2001 の発達水準の群間人数割合に差は認めませんでした。これらの結果から、DS 児の舌突出嚥下については、粗大運動発達との関連があると考えられました。
No
12
タイトル
Down症児4名の捕食・押しつぶし機能の獲得と粗大運動の発達経過
掲載論文年:巻(号);Page
言語聴覚研究 2017: 14(2); 115-125
著者
中村 達也1, 鮎澤 浩一1, 黒川 洋明1, 駒﨑 舞1, 角田 雅博1, 小沢 浩2
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
  2. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
本研究では、Down症(以下、DS)児の摂食機能について粗大運動の観点から縦断的に検討し、捕食や押しつぶしの機能を獲得する時期の指標を得ることを目的としました。4名のDS児を対象に、食事場面を動画記録し、捕食や押しつぶしの機能獲得を評価しました。また、粗大運動発達を併せて評価し、摂食機能との関連を検討しました。その結果、捕食機能は座位の発達段階が定型発達の生後5〜6か月相当以降、押しつぶし機能は生後7〜8か月相当以降で獲得が開始されていましたが、1名は立位を獲得時に押しつぶし機能を獲得し、他の3名よりも獲得が遅延していました。捕食や押しつぶしの機能獲得時の運動発達を個人内で比較すると、腹臥位にて前腕での体重支持や四つ這い位といった肩甲帯の安定性については座位の発達段階に比し未熟な児が存在していました。これらより、座位の発達段階を指標に離乳を進めることの有用性が示唆されました。さらに、座位を獲得しても肩甲帯の安定性の未熟さに配慮することも必要であると考えられました。
No
11
タイトル
八王子市における発達障害の現状と課題についての検討-八ッチネットの活動-
掲載論文年:巻(号);Page
小児科 2017: 58(13); 1699-1705
著者
小沢 浩1,2, 柳橋 達彦1,3, 笠原 麻里1,3, 松本 勉1,4, 朝長 香1,5, 末松 隆子1,6, 橋本 政樹1,7
所属
  1. 八王子市医師会
  2. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  3. 駒木野病院 児童精神科
  4. まつもと小児・アレルギークリニック
  5. なかよしこどもクリニック
  6. 京王八王子クリニック
  7. はしもと小児科
論文の要旨
八王子市において、駒木野病院児童精神科、島田療育センターはちおうじ(島はち)の医療機関の現状を調査し、課題について検討しました。
平成26年度の初診患者数は、駒木野病院児童精神科外来の初診患者数は309名であり、八王子市在住が56.1%でした。島はちは759名であり、八王子市在住が70.9%でした。それぞれ約半数が発達障害でした。
今後、医療機関以外のリソース(行政と社会的資源)の組織化・効率化を行うことが必要です。家庭や保育の現場での「子育て力」を高めていくことが必要であり、八王子市医師会小児科部会は、八王子市の子どもと家族が安心して幸せに暮らせる体制づくりのため、「八ッチネット」を設立したので、その活動も報告します。
No
10
タイトル
八王子市における相談支援専門員の現状と問題点
掲載論文年:巻(号);Page
日本重症心身障害学会雑誌 2017: 42(3); 399-404
著者
高嵜 瑞貴1, 小沢 浩2, 雨宮 馨2, 中村 達也3
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ 福祉相談科
  2. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  3. 島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
論文の要旨
障害福祉サービス利用者全てに対し、利用計画を作成することとなったが、相談支援専門員は需要に対して十分に相談を受けられているのか、事業所の現状を明らかにするためアンケート調査を実施しました。対象は「八王子市指定特定相談支援事業所一覧」の20事業所とし、回収率は85%でした。重症児者を受け入れていた事業所は10ヵ所、うち10件以上受け入れていた事業所は3ヵ所でした。相談支援専門員の勤務形態は、半数が「常勤で兼任」でした。‘やりがい’については、9割の事業所が感じており、また、9割の事業所が困難感を抱えていました。その内容は、「収入が少ない」が最も多く、次いで「業務量が多い」、「関係機関との調整」「社会資源の不足」でした。ほとんどの事業所がやりがいを感じている一方、多くの問題点を抱えていることがわかりました。障害のある方の自立した生活を支援していくために相談支援専門員の役割が期待されているが、①報酬の見直し、②医療との連携や社会資源を繋げ、広げていくことが、現状の課題として考えられました。

2016年

No
9
タイトル
Down症児の粗大運動発達が摂食嚥下機能の発達に与える影響
掲載論文年:巻(号);Page
言語聴覚研究 2016: 13(1); 3-10
著者
中村 達也1, 鮎澤 浩一1, 北 洋輔2, 甲斐 智子1, 小沢 浩3
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
  2. 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的障害研究部
  3. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
Down症(以下、DS)児の摂食嚥下機能と粗大運動の発達の関連に関する検討は多くありません。本研究では、DS児の摂食機能について粗大運動の観点から横断的に検討し、発達的変化とその関連について明らかにすることを目的としました。38名のDS児を対象に食事場面を動画記録し、舌挺出の割合や押しつぶしの有無を評価しました。また、粗大運動発達を併せて評価し、摂食嚥下機能と粗大運動発達の関連を検討しました。その結果、粗大運動の発達に伴い舌挺出が減少し、独歩を獲得する頃にはDS児の多くは押しつぶしを獲得していることが明らかになりました。押しつぶしを獲得すると処理時の舌挺出は減少していたが、嚥下時の舌挺出は残存していました。これらのことから、摂食嚥下機能が粗大運動と発達的に関連していると考えられ、離乳などの摂食指導において、粗大運動発達を指標とすることの有用性が示唆されました。
No
8
タイトル
マジック作戦が有効だった不登校の一例
掲載論文年:巻(号);Page
小児科臨床 2016: 69(11); 1865-1868
著者
小沢 浩, 河野 千佳, 野村 芳子, 積田 綾子, 小沢 愉理, 中村 由紀子
所属
島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
マジック作戦が有効だった不登校の1例を報告しました。症例は、13歳男児。主訴は、不登校、家でキレル。小学校6年から、勉強の遅れが目立ち、中学2年から不登校となりました。医療機関への受診を拒否していましたが、マジックを教えたことにより、受診するようになりました。それから毎回外来でマジックを教え、その頃から、家での暴力がなくなり、外出が増えるようになりました。13歳11カ月時のWISC-IVは、全検査77であり、全般的知的発達水準は平均の下の水準でした。そのため、特別支援学校高等部に進学し、毎日通学するようになりました。
マジックは、医療を拒否している例のラポール形成に役立ちました。本児の場合、マジックがこの家族に小さな変化を起こし、それがきっかけとなり、家の中に楽しい会話が生まれ、本児や家族の不安や攻撃性が軽減し、結果的に不登校の改善というう大きな変化をもらたしたと考えられました。
No
7
タイトル
学校自己採点法は注意欠陥/多動性障害における学校自己評価に有効である
掲載論文年:巻(号);Page
小児科臨床 2016: 69(3); 436-440
著者
小沢 浩, 岸本 洋子, 野村 芳子, 雨宮 馨, 小沢 愉理
所属
島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
発達障害の子どもたちの考えを評価するのは難しい。学校に対する自己評価法として、学校自己採点法を考案し、注意欠陥/多動性障害(以下ADHDと略す)の治療に有益だった2例の症例について報告しました。症例1は、methylphenidate内服により学校自己採点法により、子どもの学校への評価を知ることができ、母親の学校に対する評価が高まり、状態も改善しました。
症例2は、内服により学校自己採点による評価が向上したことがわかりました。ADHD-RSでも改善したが、家族に理解してもらうためには。学校自己採点法のほうが理解しやすかったです。
子どもたちが社会で生きぬくためには、自己決定力が大切です。自己決定力を育てるためには、自己肯定感の評価が大切であり、その評価には、学校自己採点法鵜が有効でした。
No
6
タイトル
黒胡椒嗅覚刺激により唾液機能が改善した蘇生後脳症の小児症例
掲載論文年:巻(号);Page
日本重症心身障害学会誌 2016: 41(3); 445-449
著者
中村 達也1, 野村 芳子2, 加藤 真希1, 北 洋輔3, 鮎澤 浩一1, 小沢 浩2
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
  2. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  3. 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的障害研究部
論文の要旨
大脳基底核損傷後には、咽喉頭の知覚低下により、不顕性誤嚥を来すことが多いと報告されています。咽喉頭の知覚低下改善に、黒胡椒嗅覚刺激が有効であるとする先行研究がありますが、これを小児に適応した報告はありません。今回、黒胡椒嗅覚刺激により嚥下機能が改善した小児症例を経験しました。症例は1歳3カ月時、脊髄梗塞後に生じた心肺停止による蘇生後脳症のため大脳基底核を損傷しました。安静時の嚥下反射は認めず、気管内吸引は頻回で、味覚刺激時には嚥下反射惹起を認めていました。また、嚥下造影検査では咽喉頭に嚥下前の食物の残留を認めたものの誤嚥は認めなかったことから、咽喉頭の知覚低下が唾液貯留の主な原因と判断し、2歳3カ月より黒胡椒嗅覚刺激を行いました。本研究では、気管内吸引回数を指標に、ABABデザインで検討したところ、黒胡椒嗅覚刺激時には気管内吸引回数が徐々に減少する傾向がみられ、最終的には1日数回程度まで減少しました。黒胡椒嗅覚刺激は、本症例の咽喉頭の知覚を改善し、良好な唾液嚥下の契機となったと考えられました。
No
5
タイトル
重症心身障害児者における二次性低カルニチン血症に対する少量L-カルニチン投与
掲載論文年:巻(号);Page
日本重症心身障害学会誌 2016: 41(3); 357-362
著者
小沢 愉理, 野村 芳子, 雨宮 馨, 小沢 浩
所属
日本心身障害児協会 島田療育センターはちおうじ 小児科
論文の要旨
重症心身障害児者(以下、重症児者)は、抗てんかん薬やカルニチン無添加の経腸栄養剤の使用、また筋肉量が少ないためカルニチンの貯蔵量が少なく、二次性の低カルニチン血症に陥りやすいです。本研究では、カルニチン無添加の経管栄養剤を使用している12例の二次性低カルニチン血症の重症児者に対してL-カルニチン少量投与(2mg/kg/日、4mg/kg/日)を行い、投与前、投与1、3ヵ月後の遊離カルニチン値と生化学検査を比較検討しました。これにより遊離カルニチン値は投与3ヵ月後には全例正常値になり維持できたとの結果を得られました。今回の結果より、摂取不足による重症児者の二次性低カルニチン血症に対しては、L-カルニチンは少量投与で十分ですが、ピボキシル基含有抗菌薬やバルプロ酸ナトリウム(以下、VPA)投与時の場合はカルニチン欠乏に陥りやすく、適切な補充量、推奨量の検討と定期的な血中カルニチン値の測定が必要であることが示唆されました。

2015年

No
4
タイトル
自閉症スペクトラム障害児の不器用さに対する認知指向型・家族参加型グループリハビリテーションの試み ~しまはちチャレンジグループの有効性と課題~
掲載論文年:巻(号);Page
作業療法 2015: 34(3); 307-316
著者
多辺田 俊平1, 相崎 貢一2, 北 洋輔3, 松尾 美穂1, 神田 聡1, 上田 敏宏1, 小沢 浩4, 中井 昭夫5
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
  2. Charlotte TEACCH Center
  3. 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的障害研究部
  4. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  5. 兵庫県立リハビリテーション中央病院 子どもの睡眠と発達医療センター
論文の要旨
不器用さを併せ持つ自閉症スペクトラム障害の小学1年生の子ども4名に、3か月間(全6回)の認知指向型・家族参加型のグループリハビリテーション(以下グループ)を実施しました。子ども自身が苦手な、あるいはできるようになりたい作業を課題設定し、「どうしたらうまくいくのか」を考え、作戦をたてながら練習し、それを大人が支援する手法を用いました。子どもたちはグループを楽しみ、仲間意識が生まれ、設定課題の技能向上を認めました。グループ後も親子で課題に向き合う姿勢が継続し、成功体験を重ねた家族もみられました。今後、協調運動への効果に加え、子どもだけでなく親子で課題に取り組むグループについても、症例を重ねて検討していきたいです。

2014年

No
3
タイトル
行動実況中継賞賛法による自閉症児の発達
掲載論文年:巻(号);Page
小児科診療 2014: 77(12); 1842-1846
著者
小沢 浩, 野村 芳子, 雨宮 馨, 相崎 貢一, 小沢 愉理, 井上 祐紀
所属
島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
行動実況中継賞賛法とは子どもの行動をその場で実況中継数る方法です。すなわち子どもの行動を言語化し、行動の合間に賞賛し子どもの遊びに寄り添う方法です。3歳の自閉症児に行い、言葉の回数・種類が増えました。遠城寺式発達検査において、言語理解、手の運動、移動運動向上を認めました。また親の不安感を軽減させました。行動実況中継賞賛法は、親の心の不安を減らし、自閉症児の発達に効果を認めました。
No
2
タイトル
特別支援教育における小学校教員と言語聴覚士の連携に関する調査
掲載論文年:巻(号);Page
言語聴覚研究 2014: 11(3); 166-174
著者
中村 達也1, 鮎澤 浩一1, 北 洋輔1,2,3, 柴 玲子1, 山形 暁子1, 小沢 浩4
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ リハビリテーション科
  2. 国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 知的障害研究部
  3. 日本学術振興会
  4. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
論文の要旨
特別支援教育において、教育と専門職の連携が始まっているものの、当時の教育と言語聴覚士(以下、ST)の連携は十分とは言い難い状況でした。本研究では通常学級を含む小学校教員を対象に、専門職であるSTとの連携について、現状における連携の実態把握と学校の体制に由来するもの以外のSTが取り組むべき課題を探る目的で質問紙調査を行いました。その結果、STの認知度の低さに加えて、教員の業務の多忙さから連携する時間がないなどの時間的な問題も連携の障壁と考えられました。さらに、児童の言語・コミュニケーション面での困難さは、行動面の問題や学習の困難に比べて気づかれにくい可能性があることが示されました。以上より、今後、学校とSTの連携強化のためには、STの認知度向上とともに、児童が示す困難さの背景を言語・コミュニケーション面の視点から検討するSTの専門性が特別支援教育に活かせることを示す必要があり、連携に当たっては、時間的な問題を考慮する必要性が示されました。

2013年

No
1
タイトル
「ありがとう作戦」により改善した反抗挑戦性障害の一例
掲載論文年:巻(号);Page
小児の精神と神経 2013: 53(3); 225-231
著者
小沢 浩1, 井上 祐紀2
所属
  1. 島田療育センターはちおうじ 神経小児科
  2. 島田療育センターはちおうじ 児童精神科
論文の要旨
攻撃性・過敏性の高い行動が問題となったケースに対し、考案した行動処方「ありがとう作戦」により改善した反抗挑戦性障害の一例を報告しました。症例は9歳女児。友達への攻撃的な行動より、反抗挑戦性障害と診断。母親と女児に対し「ありがとう作戦」を行いました。母親は女児に対しほめることを行っていなかったため、まず母親に「ありがとう作戦」を行いました。次に女児に「ありがとう作戦」を行い、問題行動が改善しました。ほめるという抽象的な教示をせずに、「ありがとう」と伝えることにより具体的な行動を強化する「ありがとう作戦」は、ほめることを具体化できない例において有効でした。
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