- Q連載「行動はメッセージ ~ 気づいてよ、僕たちの気持ち ~」 その6
トークンエコノミー法で適切な行動を増やす - A
最終回では、トークンエコノミー法についてお話しします。トークンとは代用貨幣と呼ばれ、もともとは経済学の概念です。
皆さんもお買い物をする際にお店でポイントカードを貰うことがあると思いますが、トークンはポイントカードのポイントと考えてもらうと分かりやすいと思います。ポイントカードはポイントを集めると、割引券や商品などがもらえるシステムで、お客さんの購買意欲、すなわち「買う」行動を促進させるものです。それと同じで、子どもの適切な行動を促進させたい時に、私たち支援者はトークンエコノミー法を使用します。
まずは支援者と子どもで、どのような行動を、いつ、どこで、どのような頻度や期間で、そして約束が守れた時のご褒美をどうするのか、といったことの明確な取り決めをします。これを行動契約と呼びます。約束を開始して、約束通りの行動ができた時にはシールなど(これがトークンです)を与えます。ここで気をつけなければいけないことは、最初からいっぺんにたくさんの約束をしないこと、そして難しい約束にせず、まずはトークンが比較的簡単に手に入れられる約束から始めることです。トークンが一定量貯まれば、子どもにご褒美を与えますが、ご褒美をもらえるまでの道のりが長いと、子どもは途中でやる気をなくしてしまいます。ですので、最初は短期間で比較的簡単にご褒美がもらえるように設定することも留意しなければいけません。さらにトークンを集めたら、どんなご褒美と交換するのか考えることも適切な行動を定着させる上で重要なカギとなります。もちろん、本人の好みではないご褒美では効果はありません。子どもの意見も確認したうえで、子どもにとってうれしい物や楽しみな活動などを用意するようにしましょう。
私たち大人は、子どもたちの不適切な行動に注目しがちです。そして、知らず知らずのうちにきつく注意してしまったりしてしまいます。しかし、トークンエコノミー法は、子どもたちの適切な行動を増やす支援法であると同時に、私たち支援者に対して子どもたちをほめてあげる機会を提供してくれる、子どもにとっても支援者にとっても有用な支援法の一つです。子どもたちのよい行動をたくさん伸ばし、子どもたちをたくさん認めて、子どもたちの自己肯定感を高める、このことを常に意識して子どもたち一人ひとりに向きあっていただけると嬉しいです。
(心理判定員 山本 秀二)