第20回島田療育センター公開シンポジウムのお知らせと講師のご紹介
本日は、当センターで2月に開催予定の公開シンポジウムについてお知らせです。
島田療育センターでは、毎年、地域の皆さまに向けて公開シンポジウムを開催しています。
今年は記念すべき第20回目の公開シンポジウムです。開催を見合わせた年もありますが、約20年間、地域の皆様に支えられ続けることができました。昨年度はオンライン開催という新たな試みにより、遠方の方にも多くご参加いただき、より多くの方にご参加いただきました。
さて第20回も2名の講師の先生をお招きして、貴重なお話しを伺えること大変楽しみです。
そして今回のテーマは・・・
『コロナ禍 誰もが当事者として考えたこと』です。
講師の水口浩一先生には、「未来につなげる コロナ禍で得たもの、失ったもの」というテーマで、
高橋謙造先生には、「世界の中の日本 コロナ禍で得たもの、失ったもの」というテーマでお話ししていただきます。
また、先生方のご講演の後には、当センター院長 久保田雅也 医師を交え、ディスカッションも予定しています。
そして、こちら。ポスターに掲載させていただいた絵です。実は当センター利用者の方の作品を掲載させていただきました。大胆な色合いがパッと目を惹く、個性的で躍動感ある作品に、センター内からの声も好評です。掲載を許可してくださった利用者さま、保護者さま、本当にありがとうございました。
主催者メッセージ
島田療育センター 院長 久保田 雅也 からのメッセージです。
新型コロナ感染症第7波が終わってすぐに第8波は始まった。終わりは見えない。
このコロナ禍で子どもや家族は一体何を思い、どうやり過ごそうとしただろうか。せき立てられるように一日を過ごし、何を捨てて、何を保とうとしただろうか。このあたりを現在進行形のコロナ禍の中で考える機会として本シンポジウムを企画した。
大人は大人で生き延びるために、我慢し、制限し、些細な楽しみを見つけ、やり過ごそうとしている。では子どもはどんな状況に置かれているのであろうか。ただでさえルールの多い日本の学校が、もっと窮屈になったり、行事が中止になったり、ステイホームで子どもたちは何を学んでいただろうか。疑問は尽きない。何が彼らの救いになっているのだろうか。私の孫娘たちは遊びに来るとすぐに公園に行きたいという。ここにひとつヒントがある。公園の噴水やブランコ、パンダ遊具もよいが、何よりも子どもたちは自由に走り回ることのできる「広さ」を欲している。「こころ」の解放のためにはまず「身体」の解放が必要なのだろう。
私が行なった先天性無痛無汗症患者家族へのアンケートでは行動制限によるストレスで疲弊している家族ばかりではなく、巣ごもり生活を強いられるようになって家族の過ごす時間が増えたことをpositiveに評価している家族がいた(Ped Int 2022, in press)。家族の就労状況や患者の睡眠、行動変容などが関連するが、どれかひとつでこの相反する結果は説明できなかった。家族会や医療関係者、職場、その他ピアサポートの重要性は自由記述で多くみられた。このあたりにもヒントはあるかも知れない。
このコロナ禍では答えがすぐには出ない疑問が多く、誰にも降りかかり、考えたくなくとも判断を迫られる。ウクライナに比べるとまだましだという意見は不安を解消するのにも何の役にも立たない迷妄である。ミサイルドンパチだけが戦争ではない。「平和」の中に「戦争」を垣間みれない発想は、そのうち「欲しがりません、勝つまでは」などと言い始める。そもそも生活に勝ち負けはない。
ここは状況論よりも具体的な生活の端々にあるその都度の対処をみてみたい。「ライフゆう」施設長水口浩一先生には、クラスターに陥った病棟での奮闘から、初めてわかる課題や、得たもの、失ったものを詳説していただき、社会的な立場としては子どもと同じ重症心身障害児者とその施設で働く者たちの未来を志向する講演をお願いした。
帝京大学大学院公衆衛生学研究科高橋謙造先生には、コロナ禍の日本を、一度世界の中で相対化してみることで、我々が得たもの、失ったものを生活現場のみならず、制度、学術、サポート体制などを検討していただき、未来につながるヒントになる講演をお願いした。
開催概要
日時 | 2023年2月11日(土・祝) 午後1~午後4時30分 |
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実施方法 | オンライン配信(Zoomウェビナーを使用したオンライン講義) |
講演者 | 水口浩一 氏、高橋謙造 氏 (詳細は「講師のご紹介」をご覧ください。) |
参加費 | 無料 |
定 員 | 450名(先着順・要事前申し込み) |
講師のご紹介
水口
浩一 氏
社会福祉法人みなと舎 ライフゆう 施設長/医師
同 生活介護事業所 ライフゆうラボ 管理者
小児科医(小児科指導医、小児神経専門医)
東邦大学医療センター大橋病院(小児科)、国立成育医療研究センター(総合診療部、神経内科)、都立府中療育センターの経験を経て、2017年から横須賀にある重症心身障害者入所施設ライフゆうで、「病院ぽくない施設」を目指して活動している。2020年4月から生活介護事業所ライフゆうラボを開設し、「楽しむ」を追求している。また、2022年4月からは地域の方々が誰でも相談に来られる外来「村の診察室」を開設し、地域との交流を増やす等、色々なチャレンジをしている。
「治すこと」に専心するのが医者の最大の職務であることはいうまでもないが、「治せない」ときに何ができるかもそれ以上に問われる大きな課題である。重症心身障害児(者)に関わるには「治る・治らない」の世界から一度は出て、息苦しい社会の中で、その大きな課題を共に考え、伴走する軽いフットワークが必要となる。患者を支え、家族を支え、地域を支える施策を次々に展開している水口先生の施設は病院の匂いはあまりせず、コロナ禍でチームをまとめあげる手腕は現場で考えた者だけが打ち出せるものです。今回の講演をそのノウハウを学ぶ機会としたいと思います。
高橋
謙造 氏
帝京大学大学院公衆衛生学研究科教授/小児科医
1994年 東京大学医学部医学科卒業後、東大医学部付属病院小児科、徳之島徳洲会病院小児科、千葉西総合病院小児科、恩賜財団母子愛育会リサーチレジデント、順天堂大学医学部公衆衛生学教室助手、厚生労働省大臣官房国際課国際機関専門官、国立国際医療研究センター国際協力部医師、横浜市立大学等を経て、2014年4月より現職。現場をみて考える、子どもをみて考える、がモットー。
高橋先生も現場を大事にする医者である。公衆衛生というデータサイエンスを方法とする学問を専攻していても、今現場で起こっていることを抜きに現象が語られると迷妄となる。公衆衛生こそ一度は「治る・治らない」の世界から出て時代性の中で状況を俯瞰することのできる学問である。「おれの話を聞け」というような無内容なSNS言説がはびこる中で、現場でのあらゆる労苦を分析し、世界の中の日本を相対化する眼を持ち、魔物のようなサイエンスを相手にしている先生の破壊的な意思(悪い意味ではありません)を傾聴したいと思います。
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